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「入社手続きを『抜け漏れゼロ』へ」の見出しと「業務改善の型」のラベルを配した記事ヒーロー画像。淡いクリームの地に山吹色の円モチーフ、右下にAI業務整理室のロゴ

事務・バックオフィスを整理する / 2026年8月13日

入社手続きの抜け漏れを止める|AIの前に「工程を棚卸し」する3ステップ

入社のたびに何かが抜けるのは、担当者の注意不足ではなく「手続き全体を一枚で見渡せる一覧が、誰の手元にもない」構造のせいです。ChatGPTに担当と期限つきのチェックリストを作らせ、Notionやスプレッドシートで共有し、労務クラウドで書類を電子化する——高価なシステムを入れる前にやる3ステップを、今週試せる形で整理します。


抜けるのは注意不足ではなく、手続きの一覧が誰の手元にもないから

新しい人が入るたびに、雇用契約、社会保険の届出、備品の手配、システム権限の付与——担当者はいくつもの作業を同時に進めます。工程が多く、しかも部署をまたぐため、「保険の手続きは終わったのにPCの用意を忘れていた」「アカウントは作ったが入館証の申請が漏れていた」といった抜けが起こりやすい。これは担当者の注意不足というより、手続き全体を一枚で見渡せる一覧が、誰の手元にもないという状態から生まれます。

裏を返せば、高価なシステムを入れる前に、まず「誰が・いつ・何をするか」を棚卸しして一枚にまとめるだけで、抜け漏れの多くは防げます。ここでは、その一枚を作るところから書類の電子化までを、自社で始められる順に3ステップで整理します。

自分でやるなら:AIで「手続きの地図」を作る3ステップ

ステップ1:チェックリストのたたき台をAIに作らせる

最初にやるのは、頭の中にある手続きを一度ぜんぶ書き出して、AIに整理してもらうことです。使うのは特別なツールではなく、ChatGPT・Claude・Geminiのいずれか。無料の範囲でも十分試せます。3つとも日本語で問題なく使え、まだ社内に生成AIがなければ、まずはこの3択から1つで構いません。

ゼロから表を作るより、AIに骨組みを出させて自社向けに直すほうが速く、漏れも減ります。

コピペで使えるプロンプト例(入社手続きのチェックリスト作成):

従業員30名のIT企業の総務担当です。中途社員が1名入社します。
入社日から逆算して、人事・総務・情報システムがそれぞれ行う入社手続きを、
「担当部署・期限・状態(未/済)」の列を持つチェックリスト表にしてください。
雇用契約、社会保険、備品手配、各種アカウント発行、入館証を必ず含めてください。

こう頼むと、「入社2週間前:雇用契約の締結(人事)」「入社1週間前:PC・スマホの手配(総務)」「入社当日:各種アカウント発行(情シス)」のように、時系列で並んだ一覧が返ってきます。これを自社の実態に合わせて直せば、そのまま手続きの地図になります。

つまずきポイント: AIが出す一覧はあくまで一般的なたたき台です。自社の就業規則や、業種特有の届出まではカバーしきれません。日数や担当は、必ず自社の実態で上書きしてから使うこと。

入社手続きチェックリストの例。入社2週間前(雇用契約の締結・人事)/入社1週間前(PC・スマホ・備品の手配・総務)/前日(入館証の申請と受け入れ準備・総務)/入社当日(各種アカウントの発行・情シス)/入社後(社会保険の届出と提出物の回収・人事)を縦の時間軸に並べ、各タスクに担当部署のバッジを添えた図

ステップ2:作った地図を「共有できる場所」に置く

チェックリストは担当者のPCに眠っていては意味がありません。関係者全員が同じものを見て進捗を追える状態にします。

会社の状況で選び方はこう分かれます。すでに Notion を使っているならテンプレート化しておくと、入社者が決まるたびに同じチェックリストを複製でき、「誰がどこまで終わったか」をチェックボックスで管理できます。ツールを増やしたくなければ、Googleスプレッドシートで同じ表を共有するだけでも十分です。そのうえで、普段の連絡が SlackLINE WORKS なら、リマインダー機能で「入社3日前:備品手配は完了しましたか?」と関係者へ自動通知を出すと、抜けはさらに減ります。

軸はシンプルで、「新しいツールを覚える余力があるか」「普段どこで連絡しているか」の2つ。まずは今ある道具で始めるのが失敗しにくいやり方です。

ステップ3:書類そのものを電子化する

やることの管理ができたら、次は一つひとつの作業を軽くします。とくに重いのが雇用契約書の作成・押印・回収と、社会保険の届出。ここは労務管理クラウドが得意な領域です。製品はいくつもありますが、実質、いま使っている会計・給与ソフトでほぼ決まります。迷ったら、次の3択で考えれば十分です。

  • freee会計を使っている → freee人事労務。登録済みの従業員情報が雇用契約書に自動反映され、転記ミスを防げます。入社者はLINEやスマホから入社フォームに入力できます。
  • マネーフォワード クラウドを使っている → マネーフォワード クラウド人事労務。入退社・異動の手続きと従業員情報を一元管理でき、会計・給与とそのままつながります。
  • どちらでもない/労務の専任者がいない → SmartHR。入社者本人がスマホから情報を入力し、雇用契約の締結から社会保険の電子申請(e-Gov・マイナポータル連携)までオンラインで完結します。労務管理クラウドで7年連続シェアNo.1・登録社数80,000社突破(2026年4月時点の公式発表)と実績が厚く、専任者がいなくても回しやすいのが選ばれる理由です。

勤怠管理でジョブカンを使っているなら、ジョブカン労務HRで揃え、帳票作成から電子申請(e-Gov連携)までひとまとめにする手もあります。

選び方は難しく考えなくて大丈夫で、いま使っている会計・給与ソフトに寄せるのが連携面でいちばん失敗しにくい。あとは入社が月に何人あるか、労務の専任者がいるかで必要な機能が変わる程度です。どれも無料プランやトライアルがあるので、自社の入社頻度に見合うか、まず試すのが確実です。なお、これらは「AIが全部やってくれる」ものではなく、手作業だった書類のやり取りを電子化して減らすためのツールだという点は押さえておいてください。

自分でできる3ステップの流れ図。①AIでたたき台(ChatGPT・Claude・Geminiで担当と期限つきのチェックリストを作成)→②共有・進捗管理(Notionやスプレッドシートで共有し、Slack等で期日前に自動リマインド)→③書類を電子化(SmartHR・freee・マネーフォワード・ジョブカン等で契約と社会保険を電子化)を左から右へ並べた図

つまずきやすいポイントと回避策

ここまでを実際に試すと、次のような壁に当たります。先に知っておくと、当日に慌てずに済みます。

「加入している健康保険組合が電子申請に非対応で、そこだけ紙が残る」 → 社会保険の電子申請(e-Gov・マイナポータル)は、健保組合側が対応していないと使えません。契約前に、自社が加入する組合が電子申請に対応しているかを確認し、非対応なら「その届出だけは従来どおり紙」と最初から運用に組み込んでおくと、想定外の手戻りが防げます。

「入社者本人のスマホ入力が進まず、締切に間に合わない」 → 情報入力を本人任せにすると、放っておいても動きません。依頼メールの文面(何を・いつまでに・どこから入力するか)をテンプレート化し、入社の何日前までに完了してほしいかを先に決めておく。あとの催促は、ステップ2で作った共有・リマインドの仕組みに任せます。

「無料プラン・トライアルでは、電子契約まで試せない」 → 雇用契約の電子締結や社会保険連携は上位プラン限定というケースがあります。試す前に「無料の範囲で何が確認できて、何が確認できないか」を押さえ、電子契約や社保連携まで見たいなら、その機能が含まれるプランで短期間だけ試すのが確実です。

設計が要るのはここから

ここまでは多くの会社が自分たちで始められます。一方で、自力の運用だけでは越えにくい線もあります。

ツール同士がつながっていない 労務クラウドで社会保険は済んでも、入館証システムや情シスのアカウント管理が別々に動いていると、そこは手作業のまま残ります。「労務クラウドに入社者が登録されたら、各SaaSのアカウントを自動発行する」といった連携の仕組み化は、設定と保守に一定の専門知識が要ります。

どの手続きから整えるか、何を人が確認し続けるか 入社が月に数回程度なら、AIのチェックリストとクラウドの電子化だけで十分な効果が出ます。頻度が高く連携先も多い会社ほど、仕組み化への投資が見合ってくる——この見極めは、作業そのものより一段上の設計判断になります。

今週からできる最初の一歩

システム選定から始める必要はありません。最初の一歩は、次に入社する人のチェックリストを、AIに一枚だけ作らせてみることです。

いま手元にあるChatGPTやGeminiに、ステップ1のプロンプトを自社の状況に書き換えて投げるだけ。出てきた一覧を眺めれば、「この工程は毎回抜けやすい」「ここは電子化できそうだ」と、自社の課題が具体的な形で見えてきます。地図が一枚できてから、どこをどのツールに任せるかを考えれば、遠回りになりません。

入社手続きが落ち着いたら、次に来るのは受け入れと育成です。そこも感覚頼りにしないための考え方は、別記事「感覚頼りの育成計画をやめる|スキルデータで育成を設計する方法」で整理しています。

まずは「誰が・何を」を棚卸しして一枚にすること。自動化はその次で、十分間に合います。

本記事で紹介したSmartHR・freee人事労務・マネーフォワード クラウド人事労務・ジョブカン労務HR・Notion の機能・料金・シェアや登録社数などの数値は変更になる場合があります。導入前に各社の公式サイトで最新情報をご確認ください。