営業・提案を整理する / 2026年7月12日
勘に頼った新規開拓をやめる|成約データで受注しやすい先を選ぶAI活用
新規開拓の成約率は、訪問数ではなく『誰に当たるか』の選び方で決まります。成約データから受注しやすい先の特徴をAIで言語化し、法人データベースツールで似た企業を絞り込む——勘頼りのターゲット選定をデータに変える手順を、今週試せる形で整理します。
「件数を増やせ」では、打率は上がらない
毎週アプローチ先を探し、電話をかけ、訪問する。でも商談化するのはその一部で、受注につながるのはさらに少ない。「もっと件数を増やせ」と言われても、担当者の疲弊だけが積み重なる——。
BtoB・製造・卸売・土木業の新規開拓でよく起きている状況です。問題は件数ではなく、「誰にアプローチするか」の選び方が、担当者の経験と勘に依存していることです。ベテランの感覚は確かに機能しますが、その基準は言語化されておらず、担当者が変わるたびにリセットされます。
成約率を上げるために必要なのは訪問数の増加ではなく、「受注しやすい企業の特徴を特定してそこに集中する」打率の改善です。その特定は、すでに自社に蓄積されているデータから始められます。

自分でやるなら:ターゲット選定をデータで精度を上げる
まず確認する:自社に何のデータが残っているか
ツールを使う前に、使えるデータがどこにあるかを棚卸しします。
| データの種類 | よくある保存場所 |
|---|---|
| 成約済み顧客リスト | 会計ソフト、Excelの顧客台帳 |
| 過去の見積書・提案書 | 担当者のPCフォルダ、メール添付 |
| 商談履歴・訪問記録 | 個人のメモ、ExcelのCRM、SFA |
| 失注記録 | ほぼ残っていないことが多い |
失注記録がなくても始められます。まず成約済み顧客データだけで「共通点の抽出」をするところからスタートします。
ステップ1:成約顧客の共通点をChatGPT/Claudeで整理する
Excelやスプレッドシートにまとめた顧客リストをAIに投げて、成約した顧客の共通点を抽出します。
コピペで使えるプロンプト例:
以下は過去2年間で成約した顧客のリストです。業種・従業員規模・地域・初回接触のきっかけ・受注金額を含んでいます。このデータから、成約しやすい顧客の特徴を以下の観点で分析してください。
・最も成約率が高い業種・業態
・受注金額が大きい顧客の共通点
・初回接触から成約までが短かったケースの特徴
・逆に、成約しにくかった可能性がある特徴
[顧客リストのデータをここに貼り付け]
共通点が見えたら、同じ流れで新規開拓リストの優先順位づけまで依頼できます。
上記の分析をもとに、次の新規開拓リストの中から優先的にアプローチすべき企業を上位10社選んでください。選定理由も1社ずつ簡潔に書いてください。
[新規開拓候補リストをここに貼り付け]
AIの分析結果はあくまで仮説です。「確かにそういう傾向がある」「それは違う」という現場の目線と照らし合わせながら精度を上げていきます。

ステップ2:新規ターゲットリストを生成する(法人データベースツールを使う)
成約顧客の共通点(業種・規模・地域など)が見えてきたら、その条件でアプローチ先を探します。ここで使うのが、国内の法人データベース系ツールです。代表的な選択肢に SalesNow と Musubu があり、どちらも1,000万件規模の国内法人データを基盤に、条件に近い企業を抽出してリスト化できます。
2つの選択肢を比べる(各社公式サイトの情報より):
| 項目 | SalesNow | Musubu |
|---|---|---|
| 国内DBの件数 | 公式サイトによると国内1,400万件超(法人網羅率100%とされています) | 公式サイトによると約1,200万件 |
| 絞り込み条件 | 100種類以上の条件で絞り込み可能とされています | 25種類以上の検索軸で絞り込み可能 |
| 無料で試せる範囲 | SalesNow Lite(従量課金プラン)では検索・絞り込み・件数プレビューが無料。リスト取得時のみ費用が発生 | 無料プランに登録すると30件までリスト取得が可能 |
| 既存SFAとの連携 | Salesforce・HubSpotと連携可能 | Salesforce・HubSpotと連携可能 |
(各ツールの機能・料金・件数は変更される場合があります。最新情報は各社の公式サイトでご確認ください)
選ぶときの3つの軸:
- 国内DBの件数・網羅性:とにかく母数を広く取りたいなら、件数の多いツールが有利です。
- 無料で試せる範囲:まず費用をかけずに少量で試したいなら、無料プランで一定件数を取得できるか、検索・プレビューが無料で取得分だけ課金されるか、を確認します。
- 既存SFAと連携できるか:SalesforceやHubSpotで運用しているなら、連携できるかを確認します(今回の2社はいずれも連携に対応しています)。
判断の目安:「まず無料で小さく試したい」なら無料枠から、「網羅性・件数を重視して本格的に回したい」なら件数の多いツールから。自社の状況(予算・必要なDB件数・既存SFA)に合わせて選びます。1社に固定せず、無料枠で使い勝手を比べてから決めるのが確実です。
使い始め方(どちらのツールでも流れは共通です):
- ツールに登録し、ステップ1で見えてきた自社の成約顧客の特徴(業種・規模・地域)を整理する
- その特徴に近い条件で企業を検索する(SalesNowには成約実績のある企業に近い先を探す「類似企業検索」機能もあります)
- 業種・規模・地域でさらに絞り込み、今月アプローチする20〜30社のリストを出力する(無料で試せる範囲はツールごとに異なるため、取得前に確認する)
- そのリストをChatGPTに投げ、「このリストの中で優先度が高い順に並べ直してほしい」とステップ1の分析結果とセットで依頼する

ステップ3:アプローチ前にAIで「刺さる切り口」を用意する
ターゲットが絞れたら、各社へのアプローチ文もAIで準備できます。
以下の企業に新規営業の初回メールを送ります。自社の強みと相手の課題が噛み合う切り口を考えてください。
自社:[業種・主な提供サービス・実績]
相手企業:[業種・規模・最近の動向や課題(調べた範囲で)]
接触目的:[まずアポイント獲得/見積り提案など]
初回メールの文案と、電話でのトークスクリプト冒頭30秒を作成してください。
AIが出した文案をそのまま使うのではなく、担当者が「自分の言葉」に直してから送ることが重要です。パーソナライズの精度が、返信率に直結します。
つまずきやすいポイントと回避策
「過去データが少なくて分析にならない」 → 成約件数が10件以下でも始められます。「共通点を探す」というより「チェックリストを作る」感覚で。「この条件が3つ以上揃っていたら優先する」という簡単な基準を1枚にまとめるだけで、属人的な勘を言語化する出発点になります。
「ツールで出てきた企業が的外れ」 → 業種や従業員規模の絞り込みが粗いことが原因のことが多いです。条件をより細かく(「製造業」ではなく「金属加工・プレス加工」など)に絞ると精度が上がります。
「リストを作っても担当者が使わない」 → リストを渡すだけでは使われません。「今月このリストの上位20社を回ってほしい。その結果を月末に共有してほしい」という具体的な指示とセットにすることが必要です。結果のフィードバックがリストの精度向上にもつながります。
自走では越えにくい境界線
上記の方法で、「成約データの分析 → 優先ターゲットリストの作成」は自力でできます。一方、次の領域は設計が必要です。
SFAへのデータ蓄積と継続的な改善
一度分析しても、商談記録が蓄積されなければ精度は上がりません。SalesforceやHubSpotなどのSFAに商談データを継続的に入力し、AIが学習できる環境を作ることは運用設計の問題です。「入力する文化」がない組織では、ツールより先に仕組みの設計が必要です。
マーケティングと営業の連携設計
ターゲット企業を特定しても、アプローチがコールドメール一本では限界があります。リターゲティング広告・展示会・コンテンツマーケティングなど、複数の接点を設計することで成約率はさらに上がります。これは営業とマーケティングをまたいだ設計が必要です。
営業担当者のスキルとの連動
リストの精度を上げても、初回接触のトークや提案書の質が低ければ成約率は上がりません。ターゲット選定の改善は、営業プロセス全体の改善の一部です。
今週からできる、最初の一歩
今日試せることが1つあります。
過去2年の成約顧客リストをExcelに並べて、「業種・規模・地域・きっかけ」の4列を埋めてみる。10件でも十分です。それをChatGPTに投げて「共通点を教えてください」と聞くだけで、これまで感覚だった「受注しやすい先」の輪郭が言葉になって出てきます。そこから「来月アプローチする先はここから選ぶ」という基準を1枚作る——これが、勘頼りの新規開拓を変える最初の一歩です。
SFAへのデータ蓄積まで仕組みにしたい段階になったときは、その設計を一緒に整理することができます。
ツール情報の注記:本記事で紹介したSalesNow・Musubu・ChatGPT・Claudeの機能・料金は変更になる場合があります。導入前に各社の公式サイトで最新情報をご確認ください。