事務・バックオフィスを整理する / 2026年8月19日
配送を「いつもの一社」で決めない|送料を比較して業者を選ぶ3ステップ
配送の漏れが伝票に「損」として出てこないから、見直すきっかけが生まれません。直近1〜3か月の出荷を実支払額で棚卸しし、ChatGPTで「担当者が迷わない判定ルール」に落とし、送り状発行を業者横断で一元化する——高価なシステムの前に手元でできる3ステップを、各ツールの最新料金つきで整理します。
配送業者と送料が「担当者任せ」だから、コストが静かに漏れ続ける
「うちはいつもヤマトさん」「送料はだいたいこのくらい」——配送業者の選定も送料の計算も、長く担当している人の頭の中だけで回っている。これは多くのEC・通販事業者で起きていることです。注文が少ないうちは気になりませんが、出荷件数が増えるほど、1件あたり数十円〜数百円の差が積み上がり、気づけば月に数万円、年に数十万円の差になっていきます。
やっかいなのは、この漏れが伝票に「損」として出てこないことです。毎回きちんと荷物は届いているので、問題が起きているように見えない。だからこそ、業者を見直すきっかけがないまま「いつもの一社・いつものやり方」が続きます。
コストが漏れ続ける理由は、担当者の努力不足ではなく構造にあります。「各社の料金体系がバラバラで、そもそも比較が手間」「どの荷物をどの業者で送るかの基準が人の頭の中にしかない」「注文をさばくのに精一杯で、1件ずつ最適を選ぶ余裕がない」——この3つが重なっているからです。逆に言えば、自社の出荷実態と各社の料金をいちど並べて、選び方をルールにしてしまえば、3つとも同時にほぐせます。しかも、最初の見直しは高価なシステムを入れなくても、手元の道具で始められます。
自分でやるなら:送料を「比較して選ぶ」を仕組みにする
ステップ1:配送の実態を棚卸しする
最初にやるのは業者選びではなく、「今、何を・どこへ・いくらで送っているか」を見えるようにすることです。直近1〜3か月の出荷を、1枚のGoogleスプレッドシートに書き出します。集める項目は次のとおりです。
- 配送業者・サービス名:ヤマト宅急便、ゆうパケット、宅配便コンパクト など
- 荷物のサイズと重量:3辺合計(60・80・100サイズなど)と重さ
- お届けエリア:都道府県または地域帯(同一県内・関東・関西…)
- 件数:その条件で月に何件出ているか
- 実際に支払った送料:割引後の実額(定価ではなく、実際に払っている金額)
全パターンを完璧にやる必要はありません。まずは件数の多い「よく出る商品・よく使うサイズ帯」の上位いくつかに絞ります。ここが見えるだけで、「この80サイズ、関東向けが毎月いちばん多いのに、比較したことがなかった」といった伸びしろが浮かび上がります。

ステップ2:各社の料金を並べ、AIで「最安の選び方」をルール化する
棚卸しができたら、主要な運送会社(ヤマト運輸・佐川急便・日本郵便など)の料金表を、同じサイズ区分・エリア区分で1枚に並べます。ここで大事なのは、ホームページに載っている定価ではなく、自社が契約している運賃で比較することです。契約内容がわからなければ、まず各社の担当者や請求書で自社の実額を確認してください。
料金を並べたら、条件ごとの最安をひとつずつ手で探すのは大変です。ここを ChatGPT や Claude に任せて、「担当者が迷わない選び方のルール」に落とし込みます。
コピペで使えるプロンプト例(送料比較と判定ルール作成):
以下は、当店の主要な配送パターン(商品サイズ・重量・お届けエリア・月間件数)と、
契約している各運送会社の料金表です。
・パターンごとに、最も安い配送方法(会社名・サービス名)
・僅差の場合は、配送日数・補償・追跡の有無も含めた選び方の注意点
・「このサイズ・重量以下は◯◯、これ以上は△△」のように、
担当者がその場で迷わず選べる判定ルール
を、表の形でまとめてください。
[自社の出荷パターンと各社の料金表をここに貼り付け]
送料は「安い業者に変える」だけでなく、「そもそも自社がどれだけ送料を負担しているか」も一緒に見直すと効果が大きくなります。
コピペで使えるプロンプト例(送料負担と送料無料ラインの検討):
以下は商品ごとの販売価格・原価・平均送料・平均注文金額のデータです。
・送料を自社が負担している商品の、送料込みの実質的な利益率
・「◯◯円以上のご注文で送料無料」にする場合の、損益分岐の目安
・送料が利益を食っている(送料負けしている)商品
を、根拠の数字とあわせて示してください。
[商品別のデータをここに貼り付け]
AIが出すのはあくまで下書きのルールです。壊れ物や高額品、日時指定が多い商品などは現場の判断で例外を足す。最後に「これで運用できるか」を確かめるのは人、という前提は崩さないでください。

ステップ3:送り状の発行を業者横断で一元化し、選定を仕組みに乗せる
ルールができても、送り状の発行が業者ごとに別々の画面・別々の手入力のままだと、忙しい日はつい「いつもの一社」に戻ってしまいます。仕組みとして定着させる最後の一手が、送り状発行を業者横断で1か所にまとめることです。
- 受注データ(モールやカートの注文)を、送り状発行の画面に自動で取り込む
- ステップ2で作ったルールに沿って、注文ごとに配送方法を割り当てる
- 送り状を発行し、追跡番号を受注側へ自動で戻す
ここまで来ると、「毎回どの業者で送るか考える」手作業がなくなり、選定がルールとして回り続けます。この一元化は、次に挙げるツールを使うと現実的になります。
ツールを使って本格的に運用する:EC出荷・送り状発行ツール
手元での比較が回り始め、出荷件数が増えて手入力が負担になってきたら、専用ツールを検討します。ここで挙げるのはいずれも国内提供のEC向けサービスで、複数の運送会社や複数モールをまたいだ出荷を1か所で扱えます。
| ツール | 向いている状況 | 配送・送料まわりの特徴 |
|---|---|---|
| Ship&co(株式会社BERTRAND) | まず少量から、送料を比較して選びたい | 複数の運送会社(ヤマト運輸・佐川急便・日本郵便・西濃運輸など)と複数EC店舗を一元管理し、送料の比較・送り状/インボイス発行・追跡番号の同期を1画面で完了できる。2026年2月20日から従量課金制で、送り状発行1件22円〜(月50件まで/51件以上は18円〜)+インフラ月額利用料1,100円〜。最低でも月1,100円からと、少量でも始めやすい(30日間の無料トライアルあり) |
| ネクストエンジン(NE株式会社) | 複数モールの受注〜出荷をまとめて自動化したい | 50以上のモール・カートに対応するEC一元管理。受注から出荷までを自動化できる。初期費用0円・基本料金 月3,000円(受注200件まで/201件以上は従量:201〜400件35円/件・401〜1,000件30円/件、契約1年経過後は年間保守費用15,000円)。送り状はヤマトのB2クラウド等と連携(B2クラウド連携アプリは初期費用無料・月1,000件まで送り状発行無料、1,001件目から20円/枚) |
| ロジレス(ロジレス株式会社) | 出荷判定を自動化し、規模を伸ばしたい | OMS+WMS一体のEC自動出荷システム。商品コード・数量・サイズなどの条件で配送方法を自動で割り当て、複数倉庫から最寄り倉庫の自動選択もできる。初期費用0円、少量向けのライトプランは月額20,000円(税抜・月300出荷まで、超過は従量)。ただしこれはシステム利用料で、倉庫での入庫・保管・梱包などの物流作業費は別(自社出荷か委託かで前提が変わる) |
どれを選ぶかの目安:
- まず手元で比較したい・出荷が少量 → Googleスプレッドシート+ChatGPTで十分。少額から自動化するならShip&co
- 複数モールの受注〜出荷を一気に自動化したい → ネクストエンジン
- 出荷ルールの自動化や倉庫連携まで見据えたい → ロジレス
目安として、月の出荷が数十件までなら手元のスプレッドシート+ChatGPT、または少量から使えるShip&coで足ります。出荷が数百件を超え、複数モールの受注取り込みや倉庫連携まで手作業がつらくなってきたあたりから、ネクストエンジンやロジレスといった一元管理ツールを検討する価値が出てきます。

つまずきやすいポイントと回避策
「最安」だけで選んで、遅延・破損・追跡なしの事故が増える → 送料は安くなっても、配送日数や補償・追跡がないサービスに寄せると、遅延や破損時のクレーム対応でかえってコストがかかります。判定ルールには料金だけでなく「速度・補償・追跡」も軸に入れ、壊れ物・高額品・日時指定品は別扱いにしてください。
定価(タリフ)で比較して、現実とズレる → 各社の公式料金で比較しても、実際に払っているのは契約割引後の運賃です。定価ベースの「最安」は現場で当てはまりません。必ず自社の契約運賃・実支払額で比較すること。契約内容が不明なら、見直しの前に各社へ確認するのが先です。
1件単位の最安にこだわって、全体最適を逃す → 同梱・まとめ出荷や「送料無料ライン」の設定まで含めると、1個ずつの最安とは違う答えになることがあります。1注文単位だけでなく、月全体の送料と客単価・同梱率もあわせて見てください。
自走では越えにくい境界線
上記の方法で、「宅配便の業者・送料を比較し、選び方をルール化して出荷に乗せる」ところは自力で作れます。一方、次の領域は交渉や別の仕組みが必要になります。
大口の運賃交渉 出荷量がまとまってくると、運送会社との個別の運賃交渉(値上げへの対応を含む)が効いてきます。ここはツールでは代替できず、自社の出荷ボリュームを根拠にした交渉ごとになります。ステップ1の棚卸しは、その交渉材料としても使えます。
自社便の配車・ルート最適化 自社で車両を持ち、1台で複数の届け先を回る配送は、「どの車がどの順番で回れば最短か」という別問題です。これは宅配便の業者選定ではなく、ルート最適化ツールの領域になります(例:Loogia(株式会社オプティマインド)、ODIN配送計画(株式会社オンラインコンサルタント)。ODIN配送計画には無料プランもあり、中小の配送でも試しやすい構成です)。
倉庫・在庫拠点の配置と発送代行(3PL) 送料の抜本的な改善は、最終的に「どこから送るか」に行き着きます。出荷拠点をどこに置くか、発送業務を外部の物流代行(3PL)に切り出すかは、ツール選定ではなく経営としての判断です。
今週からできる、最初の一歩
今日試せることが1つあります。
いちばんよく出る商品を1つ選び、直近1か月それを「どの業者で・いくらで」送ったかを書き出して、同じサイズ・エリアの送料をヤマト運輸・佐川急便・日本郵便の3社で並べてみる。
このとき、公式サイトの定価表ではなく、請求書に出ている実支払額(割引後の実額)で比べるのがポイントです。たった1商品でも、3社を横に並べると「この条件なら別の業者のほうが安かった」という差が見えてきます。そこまでできたら、その表をそのままChatGPTに貼って「この条件でいちばん安いのはどれか、選ぶときの注意点も教えてください」と聞いてみてください。「いつもの一社」で決めていた配送が、比較して選べる仕組みに変わり始めます。
自社便のルート最適化や、運賃交渉・発送代行への切り出しまで踏み込む段階になったら、その設計を一緒に整理することもできます。
本記事で紹介したShip&co・ネクストエンジン・ロジレス・Loogia・ODIN配送計画は代表的な一例です。機能・料金は変更される場合があります。導入前に各社の公式サイトで最新情報をご確認ください。