採用・教育を整理する / 2026年10月9日
新人の放置は、教える人の問題ではない|入社90日を計画で回す
新人が放置されるのは、教える人が不親切だからではありません。「誰かが気づいて声をかける」前提で受け入れを回している限り、忙しい時期に必ず抜けが出ます。入社後90日にやることを時期ごとに割り振り、進捗を本人からも上司からも見える場所に置く3ステップです。
初日は手厚いのに、2週目から誰の担当でもなくなる
入社初日は、席もPCも用意され、あいさつ回りも滞りなく進む。ところが1週間ほど経つと、新入社員は「何を聞けばいいのかわからない」まま自席に座っている——中小企業でよく起きる状況です。
原因は、受け入れの手順が誰かの頭の中にしかないことです。教育担当が決まっていても、その人の本来業務が立て込めば、新人へのフォローは後回しになります。担当を決めていない部署では、そもそも誰が見るのかが曖昧なまま日が過ぎます。
口頭で教えた内容は記録に残りません。次の人が入ったときに、また一から同じことを説明することになり、教える側の負担もいつまでも減りません。結果として、習熟のスピードは受け入れた部署と時期によってばらつき、早期離職や再教育のコストにつながります。
新人が放置されるのは、教える人が不親切だからではありません。「誰かが気づいて声をかける」という前提で受け入れを回している限り、忙しい時期に必ず抜けが出ます。
裏を返せば、入社後にやることを時期ごとに割り振り、進捗が本人からも上司からも見える場所に置くだけで、放置は構造的に減らせます。教える中身をすべて用意しなくても、まず「いつ・誰が・何をするか」を決めるところから始められます。
なお、この記事が扱うのは「いつ・誰が・何をするか」の受け入れ計画です。雇用契約や社会保険、備品の手配といった入社手続きは入社手続きの抜け漏れを止めるで、教える中身を手順書にしてAIに答えさせる方法は新人教育の属人化をやめるで扱っています。
自分でやるなら:入社後90日を「計画」で回す3ステップ
ステップ1:入社後90日にやることを、時期ごとに割り振る
まず、受け入れでやることを「初日・最初の1週間・1か月・3か月」の4つの時期に分けて書き出します。

このとき大事なのは、項目ごとに「誰が」「いつまでに」を必ず付けることです。「業務の説明をする」ではなく「請求業務の流れを、経理の〇〇が入社3日目までに説明する」まで具体化します。担当者名まで入れておくと、忙しい時期でも誰かの仕事として残ります。
最初から完璧な計画は要りません。書き出してみて「1か月目以降が真っ白だった」と気づくこと自体が目的です。放置が起きるのは、たいていこの空白の時期です。
コピペで使えるプロンプト例(受け入れ計画のたたき台作成):
当社は〇〇業(従業員〇名)です。
〇〇職として入社する新入社員の、入社後90日の受け入れ計画を作ってください。
・「初日/最初の1週間/1か月/3か月」の4つの時期に分けてください
・各項目に「誰が担当するか」の欄を付けてください
・業務の説明だけでなく、人間関係づくりと、
本人が不安を出せる場を含めてください
・1か月目以降が薄くならないようにしてください
ステップ2:進捗が、本人からも上司からも見える場所に置く
計画ができたら、進捗を1か所で確認できる状態にします。ここは新しいツールを買う話ではありません。
Googleスプレッドシートで十分です。時期・やること・担当者・期限・完了チェックの5列を並べ、新入社員本人と受け入れ側の全員が見られる状態にしておきます。無料で、いま使っている環境のまま始められます。
すでにNotionを社内で使っているなら、データベース機能を使うとテンプレート化しやすくなります。1人入社するたびにテンプレートを複製すれば、同じ計画が毎回そのまま使えます。料金はフリープランが0円、プラスプランが1メンバーあたり月1,650円、ビジネスプランが月3,150円です(2026年9月時点、公式サイトより。年払いにすると割引があります)。
どちらを使う場合も、新入社員本人がチェックを付けられることが条件です。受け入れ側だけが管理する表にすると、本人からは進み具合が見えず、「自分だけ遅れているのでは」という不安が残ります。
ステップ3:つまずきを「聞かれる前」に拾う
計画どおりに進んでいても、本人が困っていないとは限りません。1週間後・1か月後・3か月後に、短いチェックインの時間を取ります。
ここで効くのは、聞き方です。「何か困っていることはある?」と聞いても、入ったばかりの人は「特にないです」としか答えられません。

答えやすいのは、範囲を限定した質問です。「今週いちばん時間がかかった作業は何ですか」「誰に聞けばいいか迷った場面はありましたか」——事実を聞く形にすると、本人が問題だと認識していないつまずきまで出てきます。
集まった回答は、ChatGPTやClaudeに読み込ませて傾向をまとめます。入社した人が複数いる場合は、共通してつまずいている工程が見えてきます。そこが、次の人のためにマニュアルを用意すべき箇所です。
コピペで使えるプロンプト例(チェックイン回答の整理):
以下は、入社1か月の社員へのチェックインで集めた回答です。
以下の観点で整理してください。
・複数人が共通してつまずいている業務・工程
・「誰に聞けばいいかわからない」が発生している場面
・受け入れ計画に足りていないと思われる項目を3つ
[チェックインの回答をここに貼り付け]
つまずきやすいポイントと回避策
計画を作った時点で満足して、運用されない → 週1回、受け入れ担当が表を開く時間を決めます。既存の定例会議の冒頭5分に入れてしまうのが、いちばん続きます。
やることを詰め込みすぎて、初週で消化不良になる → 最初の1週間は「業務を覚える」より「誰に何を聞けばいいかがわかる」を目標にします。人と場所の把握が済んでいれば、その後の習得は本人が進められます。
チェックインが「問題ないです」で終わる → 上司が同席していると、本音は出にくくなります。1か月目までは、受け入れ担当や年次の近い先輩が聞く形にすると、具体的な話が出てきます。
(各ツールの機能・料金は変更になる場合があります。最新情報は各社の公式サイトでご確認ください)
自走では越えにくい境界線
上記の方法で、「入社後90日が計画で回り、つまずきが早く見つかる状態」までは自社で作れます。一方、次の領域は専門的な設計が必要になります。
人事評価・等級制度との接続
「3か月で何ができていれば一人前か」を評価基準と結びつけるには、等級や職務要件の設計が必要になります。受け入れ計画だけを整えても、評価の基準が曖昧なままでは、本人も上司も到達点を判断できません。
職種別の育成体系づくり
営業・製造・事務など職種ごとに必要なスキルを整理し、数年単位の育成の道筋にまとめる作業は、現場の実態を踏まえた設計が必要な領域です。
定着そのものの改善
受け入れの手厚さは離職の一因にすぎません。処遇・配属・上司との関係など、複数の要因が絡む部分は、オンボーディングの改善だけでは動きません。
今週からできる、最初の一歩
今日試せることが1つあります。
直近で入社した社員1人に、「入社してから困ったことを5つ挙げてください」と聞いてみてください。入社から半年以内であれば、記憶は十分残っています。
出てきた5つが、そのまま次の人の受け入れ計画に入れるべき項目です。「誰に聞けばいいかわからなかった」が混ざっていれば、それは教育の問題ではなく、受け入れの設計で埋められる部分です。
本記事で紹介したツールの機能・料金は2026年9月時点のものです。各社の仕様変更により変わる場合があります。導入前に各社の公式サイトで最新情報をご確認ください。